My 双眼鏡

星見(star watching)の入門には、天体望遠鏡より、双眼鏡がお勧めだ。 安くて入手が容易、邪魔にならず、天文に飽きてしまっても他の用途にも 使えるので、押入の肥しにならない。そして像が倒立にならないので 初心者が星座や星の並びを憶えるのが楽なので。 まずは双眼鏡と、星座早見、(と時計、LED懐中電灯)を揃えよう。双眼鏡が 気に入ったら、カメラ用三脚(かなり頑丈なもの)と双眼鏡ホルダを揃えよう。

どんな双眼鏡が良いのか?

昔から定番なのが、7x50と言われる倍率7倍、口径50mmの双眼鏡だ。

理由はたくさん有るが、主なものは、

口径が大きいこと
口径が大きい程、集光力が有り暗い星まで良く見える。また細かいものを 見分ける分解能も良くなる。とは言っても、50mmを超えると重量的に手持ちで 使うのが困難になり、また値段も突然跳ね上がる。
倍率が「低い」こと
倍率が高くなると、その2乗に比例して像が暗くなる。また手振れの影響も 大きくなる。手持ちで使える倍率は10倍程度が限界である。更に倍率が高く なると、実視界が狭くなり対象物を視野に入れるのが困難になる。
視野が広いこと
上記と関連するが、視野が広くないと特に初心者は目的のものを視野に 入れることすらままならない。それに広い視野で見る星野、星座、星団は 何と言っても快感だ。また長い尾を曳く彗星は視野の広い双眼鏡でないと 視野に納まらない。一般に低倍率のもの程、視野が広いが、ズーム式の ものの中には、倍率を下げると見掛け視界が狭くなって、倍率を下げても 視野があまり広くならないものも有る。何の為のズームなのだか。
射出ひとみ径が大きいこと
これが大きい方が暗いものを明るく見ることができる。とは言っても 人間の瞳は普通7mmまでしか広がらないので、これより大きくても無駄だ。 でもそんな双眼鏡は見たこと無いが。
像がシャープなこと
当り前だが、レンズやプリズムの研磨精度が高く、高精度に組み立てられ、 光軸がきっちり合って、対象物がシャープに見えること。精度が低いと いくら倍率が高くても像がボケボケでろくに見えない。一般にズーム式は 像がボケボケだ。
ところが通販なんかだとこの正反対:小型(口径が小さい)、高倍率、ズーム式 が溢れている。この手の光学系は全く使い物にならないので、間違っても 買ってはいけない。

ただ、最近は都市部だと光害がひどく、夜、外に出ても、懐中電灯無しで 本や星図が読めてしまう環境の所も有る。こういう場合は、瞳が5mmくらいまで しか広がらないので、倍率を10倍くらいまで上げた方が良いだろう。

結論として、7x50mm、ただし都市部の場合は、10x50mmがお勧め。そして視野が 広く、結像がシャープなものを。また、眼鏡の人はアイリリーフの長い(15mm 以上)ものを選びましょう。

現在、手持ちの光学系

Vixen Ascot SuperWide 10x50
2002年のゴールデンウィーク頃、いつもの望遠鏡屋へ行くとVixenから 新しいカタログが今届いたとのことで、パラパラとめくっていると、見慣れない 異様な(プリズム部がやたら巨大)双眼鏡が目に止まった。何でも見掛け視界85°、 プリズムでは足りなくてミラーを併用しているとか。広視界が好きな私は その場で早速注文。すぐに届いたが、近くのビル街を覗いて見てその激しい 糸巻湾曲に思わず吹き出してしまった。また初期ロット(私のは製造番号0004. ちなみに取扱説明書に載ってる写真のものは0003) の為か、ストラップが入ってなかったりした。でも星を見るのには、実は像面湾曲は 余り気にならない。又、ストラップも言ったら次の日に届いた。

で、やっぱり広い視界は良い!難点を挙げると、接眼部のゴム見口が低く、横から の迷光がかなり気になること。視界が広いだけに余計気になる。また、この接眼 レンズがやたら曇りやすい。他に視野の中心部と周辺部でピント位置が違うのも 気になる。とか色々難点は有るのだが、圧倒的な広視界の魅力がそれを上回る。 私の持ってる様々な双眼鏡、望遠鏡、カメラ等の中で最も使用頻度が高くなって しまったという事実がその魅力を物語っているだろう。

ミザール7x50mm
扱い易い。ゴム被覆。長いアイリリーフ。キャップの脱落防止に一工夫。 精密光学機器を初めて買うならこれ。とにかく扱い易い。「良い」とは言えない レンズだが、悪くもない。この価格帯で悪くないものはこれぐらいしか存在 しないのではないだろうか。初心者向けに細かい気配りが効いていて、初めて の一本に安心して勧められる。これと星座早見をセットで星空散歩を楽しむ のが、最初は良いのではないでしょうか。
PENTAX 7x50mm
安売りしていたので買った。初めての一流メーカ製。視野が狭くて、 見え味も期待外れ。ミザールの方がマシ。ただ、ポップアップ式接眼フードは 優秀。横からの迷光の遮断効果抜群。
NIKON Action 7x50mm
安売りしていたので買った。一流メーカ製。NIKON 7x50mmSPが優秀だった のでNIKONに憧れて買ったのだが、期待外れ。PENTAX 7x50mmと互角。SP とは全然別物。唯一の取り柄は、SPに較べて軽くて持ち易いこと。 もう手放した。NIKON買うなら高くてもSP、でないとNIKONの意味が無い。
カールツァイス 8x40mmくらい
20万円くらいするはず。もちろんこんなの持てるわけない。人に借りた。 泣く子も黙るカールツァイスである。そもそも双眼鏡を発明したのも カールツァイス。ダハプリズムを発明したのもカールツァイスのはず。 プラシーボ効果てんこ盛りで期待して覗いたのだが…。 見掛け視野はやや広めだが、Vixen Ascot SuperWideに慣れてしまった目には もはやもの足りない。それに私のような素人目にも明らかに分かる 盛大な糸巻湾曲が…。カールツァイスってこの程度なのか? プラシーボ効果がみるみる冷めてしまった。
フジノンFMT-SX10x70mm
フラットナーレンズ入りで視野の隅々までシャープ。10倍と低倍率だが、 木星のガリレオ衛星や、土星の輪が、ここ神戸の市街地でも楽勝で見える。 望遠鏡が写真撮影中の暇潰しに、これでスターウォッチング。また、これで 見る夕暮れや朝焼けの景色は絶品。 ただやっぱり重い。三脚は必需品。あと∞のピント位置が、+1.5の目盛位置で 合う。本来0で合うべきだと思うのだが。
VANGUARD 10x50mm
見掛け視界70°。星祭で3000円。案外良いが、Vixen Ascot SuperWideが 有るので、余り出番が無い。

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